
交配から選抜まで、幾年もの時間をかけています。
当園のこだわりは、大きく三つあります。ひとつは、自ら花を交配して品種を生み出すこと。ふたつめは、選び抜いた株を株分けだけで増やすこと。そして三つめは、その株が健全であることを自らの手で確かめてきたことです。 仕入れた苗を並べるのではなく、この園で生まれ、この園で育った株をお届けする。そのために必要な手間は、惜しまずかけてきました。

東北南部から九州の断崖や渓流沿いの岩場に自生する、日本固有種のギボウシです。園芸の世界ではホスタと呼ばれ欧米でも人気がありますが、イワギボウシは日本独自の育種が進んできました。羅紗、甲龍、鈴虫剣、舞鶴芸、燕尾芸、石化といった葉の芸に加え、花では一弁花から十九弁花までの咲き分けや、子宝咲きまで現れます。

日本を代表するユリで、当園では花の形質に着目して選抜を重ねてきました。赤斑点花、赤吹っ掛け花、青軸素芯、緑筋、柱頭白——それぞれに異なる特徴を持つ株を育てています。開花は7月ごろ。花の大きさと香りの強さは、一度目にすると忘れられません。

山野草とあわせて、アガベやエケベリアも取り扱っています。アガベは白く硬い棘の張り方に、エケベリアは葉の重なりの端正さに個体差が出ます。同じ品種でも育て方や環境で姿が変わるため、実際にご覧いただいてお選びいただくのがいちばんです。
01選び抜いた個体は、種から増やすと同じ芸が出ません。そのため「後ノ上」シリーズはすべて株分けで殖やしています。一年に増える数はごくわずかで、まとまった数がそろうまでに何年もかかります。手間はかかりますが、同じ芸を受け継がせるために、この方法をとっています。
02アメリカから取り寄せた検査キットで、葉をカミソリで切り取って調べました。刃物からの感染があるといけないので、カミソリは使い捨てにしています。金剛、羅王、羅達磨、舞鶴、雷神、天青、伐折羅の7品種を検査し、いずれも陰性を確認しました。
03作出した品種は国内だけでなく、海外のお客様のもとにも届いています。問い合わせをくださるのは、日本のギボウシの芸を知る愛好家の方々です。言葉が違っても、葉に現れた芸を見れば伝わるものがある——そう感じながら、一鉢ずつ送り出しています。

どの株とどの株を掛け合わせるか。葉の芸、花の形、株姿——出したい形質を思い描きながら親を選びます。狙いどおりに出ることはむしろ稀で、ここでの判断がその後の数年の行方を左右します。

交配してできた種を採り、まいて発芽を待ちます。ギボウシもヤマユリも、芽が出てから芸の片鱗が見えるまでには時間がかかります。この段階ではまだ、どの株が残るのかは誰にも分かりません。

発芽した株を育てながら、年を追って選り分けていきます。葉の芸が安定するか、花にどんな変化が出るか。数年をかけて見極め、最後まで残ったものだけが次の段階に進みます。ほとんどはここで外れます。

最後まで残った株には、自らの名字から採った「後ノ上」の名を冠します。黒龍、目白、抱月、雷鳥、赤玲——一株ずつ名前を付けていきます。商標登録第6663723号として管理しています。

名前を付けた株は、株分けだけで殖やしていきます。一年に取れる子株はごくわずか。お客様にお届けできる数がそろうまでに、さらに何年もかかります。急がずに、確実に増やすことを選んでいます。